本当に使えるデザインスキルを手に入れよう。

デッサンって何を考え描いてるの?(思考プロセス公開)

デッサンの制作過程を動画撮影しました。

何を考えて、どういう思考パターンでデッサンを描いているか?

メルマガなど配信してまして、よく質問される事の一つに「デッサン」があります。デッサンとは何なのか?実際に描いたことのない人は、中々わかりずらいだけに、逆に興味があるのかも知れません。

また、30過ぎて、デザイナーを目指す方などは「美大等で専門的な勉強をして来なかった」と言うコンプレックスを持つ方がいらっしゃるようですが、美大等の学校での専門的な技術の代表格として、この「デッサン」はいつも、話題になったりしますので、単純に興味がある方が多いのかも知れません。

ただ、興味ある殆どの方が「デッサンの本質が描写力(造形力)のみ」と思ってらっしゃるように感じたので、今回、デッサンを実際に描くプロセスを紹介し、描き手がモチーフのどこを見て描いているのか?の一例をお見せしながら、デッサンは造形力とは別に、「とことん自分を疑う力」を養うモノ…と少しでも感じて貰えたら良いなと思います。

結構、この「自分を疑う力(客観性を保つ自分との戦い)ってデザインに大切なもので、美大等はそれを「カケラ」でも持っている人間を合格者として迎えるのです。それでないと、美大のデザイン科(なのに)入試科目から30年以上もの間デッサンが残っているハズもないのです。

それに「デッサン」って何度言葉でお伝えしても、中々イメージしづらいものである事は確かだと思い、その思考の過程を動画と解説と図解を交えながら、お伝えしてみようと思います。

Youtubeの素描プロセスをお見せする動画

参考に、最近描いたデッサン動画を載せさせて貰います。勿論、動画として作ってる為、当然編集し短くまとめていますが、大体のイメージはわかるかと思います。勿論、どうしても鉛筆のタッチであったり、描き込みに目がいくでしょうが、何を考えて描いているか、どうやってお手本と形を合わせて描いてるのか?等、気をつけて見ていって頂けたら嬉しいです。

美大入試等で出される静物や石膏のモチーフではないですし。紙や画材も少し違ったものも使ってますが、やってる事は大体同じです。よければ動画の方も是非ご覧頂き(ほんの数分ですので)大まかにデッサンのイメージを掴んでもらえればと思います。
※Youtubeにデッサンチャンネル?として公開してますので面白ければ「いいね」ボタン、チャンネル登録お願いします。不定期ですが次また描いてみます。

デッサン動画の元になる写真

まず今回のモチーフですが、モチーフを並べるスペースなどなかったので、写真を元に描きました。↓元の写真はこちらです

引用元:https://www.reviewanrose.tokyo/article/455250436.html

「ペーパームーン」という1973年の映画のワンシーンで、9歳の少女(テータム・オニール)がタバコをくわえてるということで、当時かなり話題になった場面のものです

写真を元にデッサンするということについての可否ですが、もちろん目の前にモチーフがある方が(モチーフの裏側から見たり出来るので)絶対に良いですよね。

特に初心者の方は可能な限り目の前にモチーフがある環境でのデッサンをお勧めします。(モチーフがどういう形になっているのか?静物や石膏が目の前に在れば、触れたりいろいろな角度から観察できますからね)

しかし現実的になかなかお家に石膏像を置いたり複数の静物を配置しておくスペースなどないでしょうから、無理せず、写真をもとにデッサン練習するのは全然アリだと思います。形に拘りすぎて続かないのが一番バカらしいので。

今回は描くところを動画に収めるため、光の関係等もあり、写真を元に描かせて貰いました。

デッサンで、自分の作品を疑う(見直す)力を鍛える

デッサンで手に入れることが出来る描写力より大切なスキル

デッサンをした人が、手に入れる事ができるスキルって何だと思いますか?「描写力」と答える方が多いと思いますが、もしかすると経験者の方が口にするのは、

「自分の作ったものを自分で疑い・修正する」という能力(スキル)を言う方多い気がします。別の言い方をすると、自分で自分の作ったものを疑う力、でしょうか?

デッサンを描いている動画を見てもらうと、写っているのは鉛筆を走らせる・こすって鉛筆を画面に定着させる・消す、等々の作業行為だけで、止まっている時間、元のモチーフと描いた絵を見比べている時間等は、映っていません。

 

ただ、この「絵を見直している時間・自分で自分の絵をチェックしている時間」はむちゃくちゃ大事で、具体的には、遠くから自分が作ったものを眺めたり、色々なやり方で、自分の絵がもっと良くならないか?ダメ出ししながら修正、ブラッシュアップする時間と言っていいです。

そういう時間は全て動画上でカットされてるので、なんだか凄い調子よく何の迷いもなく描き進めていくように見えますが、そんなことはありません。一定時間描いて、見直して修正、また描いて見直す、それの繰り返しです。

デッサン力とは「目の前のものをその通りに、そのままに描けるスキル?」ということですが、(本番では)デッサンが終わるまでに誰かがアドバイスをくれはしないので、正しくモチーフを描けているか?を自分でチェックする必要があるわけです。

例えば今回のように写真を元にデッサンの練習をする時、写真と描きかけのデッサンを並べてじっと見比べていく、という愚直なやり方も含めて、何通りもの「チェックフィルタ」をかけていイメージですかね。

このように、自分の作ったものを自分で見返し、どんどん軌道修正していくスキルは、デザイナーにとって必要不可欠な力で、デッサンを本気で練習する過程で、自然手に入れることが出来るはずです。デザインでは「自分のデザインは本当にエンドユーザーに届くか?」と主観を廃し客観的に考え抜く力の土台になる訳です

だからデッサンを描いている思考を自分で振り返り分析して見ますと、「描いている感じがあんまりしません。ずっと修正ばかりしている感じ」です。

たまにTwitter等で、「美大で四六時中描いているデッサンなどはデザインと全く関係ないし、デッサンで造形力と描写力を鍛えても、デザインで使う場面はほとんどない」とツイートしている方を見かけますが、

多分、デッサン経験ない方がイメージで話されてるだけで、他については良い事を言っておられたりするので、困ったモノだなと正直思ってしまいます。美大予備校時に鉛筆の使い方、タッチの出し方等を講師から教わった事は一度たりともありません。そんなものは10枚も描けば勝手に覚えてしまいます。

繰り返しになりますが、デッサンで一番鍛えられるのは「自分を疑える感性」「自分で自分のデザインを軌道修正していける修正力」です。

ここの部分をきちんと押さえた上で、話を続けていきたいと思います。

「形が狂っていないか?」を見直す

デッサンで「形が狂っていないか?」というのは、とても大切な部分で何度も見返さないとならない、最たるチェック項目です。

「形の狂い」とひとことで言っても本当は、「例えば石膏デッサンなどでは、人体として間違った骨格になっていないか?」という意味も含まれます。

でもここではまず、平面的に間違った位置に目を配置してしまっていないか?耳の位置は合っているか?というX軸・Y軸の数値で表される位置情報において、自分が描いたデッサンとモチーフでずれが生じていないかをチェックします。わかりやすく言うとトレーシングペーパーやパソコンを使わずに目分量でモチーフをトレースするイメージでしょうか。

 

ネガティブスペースが正確に描けているか?見直す

ネガティブスペースを見る

デッサンを描いている人が(デッサンとモチーフの)どんなところを見比べているか?具体的に考えてみますと、描こうとしているモチーフそのものの形(①の白い部分)が狂っていないか?を見るのはもちろん、①以外の形、ネガティブスペース(②の黒い部分)も同時に見てます。

①の部分が通常見ている「モチーフ自体の形」で、②のネガティブスペースは、日常生活であまり意識しない形でありますけど、デッサンを描くときはこの(外側の)形を意識して見て、ネガティブスペースの形(シルエット)は正確に描けているか?を見直していきます。

ネガティブスペースの形が正確に描けているか?意識して見直すことで、モチーフ自体の形を描いた上でもう一度チェックをかけるという意味でも、より厳しい2段階のチェックとなりますし(②Left+②Rightのネガティブスペース)ネガティブスペースはなにもない空間で、形だけを見直すことがしやすく、目鼻口が含まれるモチーフ自体の形合わせよりもニュートラルな感覚で形を見直せるわけです。

ネガティブスペースを二つに分けて見る

またいきなりネガティブスペース全体の形を(モチーフと自分の絵で)いっぺんに見比べるのは難しかったりするので、上の図のように、②left(黄色)と②right(紫色)のネガティブスペースの形に分けて(モチーフと自分の絵で)見比べたりもします。やはり小さく分けて見た方がより正確に見比べられるということですね。

ここら辺は自分が見比べやすいスペースをチョイスしてやりやすいようにチェックしていけばいいです。こうしなければと言う決まりはもちろありません。

またこれだけではなく、例えば顔のシルエットの形はどうか?モチーフ通りに描けているか?など、もっと細かい部分の形(シルエット)をチェックしていったりもします。(下図:赤い部分)

細かい(顔の)シルエットの形を見る

下の図で言うと赤色部分のシルエット部分など自分が描いた絵と見比べます。シルエットの部分などは、明度が濃く見比べやすいので上手く使ってどんどん比べてみましょう

ここら辺は説明上ひとつひとつゆっくりと取り上げてますが、実際に描いている最中は、見ている部分を素早く切り変えて、色々な場所のシルエットがモチーフと合っているか?瞬間的にチェックし、間違っていればすぐに修正したり、もう一度ネガティブスペース合ってるか確認し直したり臨機応変に見直してるので、デッサンを描いているのを横で見てても多分描き手が何をチェックしているか?ほとんどわからないかもしれません。

こんな風に、色々な角度から形合わせをしていくやり方は、定石として誰かに教わったわけでもないですし、参考書に書いてあったわけではありません。しかし、経験上、この方法で全ての間違いを修正し終わると、結果として大体、正確に形が取れますので、正確なデッサンをする上で有効な方法の一つだと思います。

デッサン上手い人に「デッサン描くときにこの方法を使うか?」と聞くと「やっていない」「初めて聞いた」と答える方もいますが、無意識な作業すぎてやってる本人も気がついてもいないだけで、多かれ少なかれ実践している気がします。

縦横線をしいて位置関係をチェックする

縦横線を基準にモチーフの離れた要素の位置を確認するチェック法です。目分量だと思い込みで狂うので鉛筆などを自分とモチーフの間に突き出して律儀にやります。慣れてくると縦横で3回くらいで済みますが

また、チェックする時、何と何を見比べればよいのか?と言えば、何でもいいですが、同じ位置、近い位置に見える部分を見比べてみるとわかりやすいでしょう。

↓ここで言えば左肩と右肩の位置ですね。そしてもう一歩踏み込んでみて、例えば人物の場合、体の重心がどっちに傾いているか?等がわかるようなポイントだといいかもしれません。この写真でいうと「右肩のほうが少し落ちているから、右に体重をかけてるボディバランスになっている?→右手でタバコ持っているからか」等モチーフの人体バランス・状態の理解が進むようにカタチを取っていければ最高です。

縦の位置関係もチェックします。

画面サイズは縦長なんで、位置関係もずれがちです。横を合わせるよりしっかりとチェックした方が良いでしょう。ここでは目尻と右手の肘との位置関係をチェックしてます。距離的に離れてるのでここずれてると、大きくカタチが狂っちゃうな、というポイントを見比べると良いでしょう。

ここまで書いてきたことをちらりとまとめてみますと、、、

・モチーフ以外のスペース(ネガティブスペース)のチェックをする。

・目の形や目立つシルエットの形も時々チェックする

・縦と横の位置関係をチェックする

ということになります。

今更ですが、ここらへんまとめてチェックできる「デッサンスケール」という道具を思い出しました。美大予備校とかで、デッサン漬けの毎日を送った方は多分見たことあるでしょうが普通の日常生活ではまず見ないものだと思いますのでご紹介しておきますね(笑)

出典:https://dessinlaboratory.com/tool/perspective-device.html

こちら見ていただくと、今回長々と書いたチェックポイントが何であるか?何をチェックすることで形が正確に取れるのか?わかってもらえると思います。これをモチーフに向けてかざして覗き込むわけですね。ネガティブスペースも自然に分割してチェック出来ちゃいますね。

「立体として描けているか?」を見直す

 

3次元の立体物であるモチーフを2次元の中に定着させる嘘をつくこと

デッサンとは、3次元の立体物であるモチーフを2次元の紙の上に定着させる」という大嘘をつく行為と言えます。

描いている人はとにかく、一つ一つのモチーフが「立体なんだ」と常に意識して描かないとなりません。モチーフが人体の場合、目鼻耳口とそれぞれのパーツが、立体に見えるように描けているか?常に見直しながら描いていくわけです。

上の赤線部分のように、頭は後ろへ回り込んでいて、タバコは円柱の形で手前に突き出ている、西洋人のまぶたは薄いので二重になっている等々、とにかく立体としてどうなっているか?を観察して描いていきます。デッサンはへのへのもへじではまずいわけです。

立体物を立体物のように描く時に、一番大切なのはモチーフの中に隠れているカタチを見極めて描く事だと思います。

例えば、この女の子の頭部で言えば、頭蓋骨のカタチ、が中に隠れていますよね。基本形態で言えば「球」ですよね。頭蓋骨(球)→頭皮→髪の毛、と覆われているので髪の毛の流れがこんな風に曲線に沿って揃ってらように見えてくるわけで、もし頭蓋骨が立方体ならば、断崖絶壁の滝の水の流れのような見え方で、角張ったカタチに沿って髪の毛が落ちてくるように見えてくると思います。

実際ここまで極端な話にはならないでしょうけど中の形を意識せずに描くとどんな立体物なのか、不明瞭になります。描いている人が理解しないで描いてるので、まぁそりゃそうなりますよね。

頭だからわかりやすかったと思いますが、例えば手首の場合ですと、とりあえず手首の関節どうなってたかな?と今でも自分の左手を触ってみます。解剖図を見て骨の位置まで見ないでいいですが中のカタチを意識して描く事を忘れないで下さい。これだけででつさが見違えるよう立体感が出てくることもあるのです。

 

最後に。デッサンで学ぶデザインの一番大切なスキルとは

 

大切なのは「自分のデザインを疑い、自分のデザインを修正するスキル」

ここまでで全ての工程を説明出来たか?わかりませんが何となくデッサンという作業の全容が、少しでも伝われば嬉しいです。デッサンに関して言うと、美大生や美大予備校生に大きなアドバンテージがあります。

何故なら、美大に合格する迄に彼らは1年間に200枚くらいは平気で描いているからです。そして彼らは絵が上手くなる為にデッサンを描いてるわけではなく、最終的にはデザインが上手くなる為に練習しているわけで、作品を見直して悪いと思えば躊躇なく、描きかけのデッサンを全部消して修正する事もできます。

そうです、繰り返しになりますが、
デッサンで一番大切なのは、描写力さえも超えて「自分のデザインを疑い、間違いを見つけ自分でデザインを修正するスキル」です。

なので、そういう本質を捉えないままに、ただ何となく描きっぱなしのクロッキーを毎日やり始めても仕方ないのです。

デッサンの経験がない人を脅かしてるわけではありません。この記事をここまで読んで頂き、動画も少しでも見て頂けたなら、デッサンをする上で1番大切なスキルが何であるか、お分かりになったと思います。

今からデッサンを描く事は必要ない、ただ本質を理解して貰いたいだけ

自分で自分のデザインを修正する力、いつでも客観的になれる力、普段見ている「見方」と真逆の「見方」でものを見れる力。今まさに皆さんが向き合っているデザイン制作に必要不可欠な力ではありませんか?

そうなんですね、やっぱりデッサンとデザインは地続きで、同じ道を歩いているわけです。そうでなければ何十年もデザイン科の入試科目からデッサンなんて無くなっているはずですよね。

もしあなたにデッサン経験がないのであれば、あなたがする事は何か?と言えば、まずもう一度、この記事を読んで、何故、デッサンが大切か?を考え、自分の作ったものを疑って、修正して、最後に信じる事が出来るくらいのクオリティにデザインを仕上げる事です。

美大生は、その土台として美大予備校のデッサンの練習でそのスキルの土台を手に入れました。

あなたがする事は、デッサンを今から200枚描く事ではないはずで、ここまで来たら、その分デザイン作品を作りましょう。ただ、その時に「美大生が数百枚デッサンを描いてまで手に入れる、自分の作品を見直すスキル」を強く意識して、自分の作品に厳しく向き合ってほしいと思います。

「デッサンなんてデザインに何も関係ないよ」等の無責任な事を言う人などは、大抵本物のデッサンなど一枚も描いた事ないモノです。経験もしていない人の意見ではなく、美大デザイン科の入試科目からデッサンが30年もなくならない事実を見つめ、その本質から逃げずに一作一作厳しく自作と向き合えば、

デッサンを具体的に描かずとも、同じスキルは手に入ると僕は思います。大切なのは、描く(作る)ことよりむしろ見直して直す作業、ということを今回の記事では、お伝えしたつもりです。

デザインを作る過程で少しでも思い出して頂けたら有り難いです。

 

 

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